Vangelis

 70年代初頭にはアフロディテスチャイルドを率い、ジョンアンダーソンとの競演などプログレ界のトップキーボーディストとしての地位を確立したヴァンゲリス・パパタナーシュ。そんな彼も、今での評価はプログレ系キーボーディストとしてよりむしろ、映画音楽界の巨匠といった方が的を得てるでしょう。NHK-FMのクラッシック番組内でピアノ曲特集で流されるくらいなので、世間一般には過去にロックバンド(とは言ってもプログレバンドだけど)を率いていた人だなんて認知されていないんでしょう。
 映画音楽を担当した作品は「炎のランナー」や「ブレードランナー」を筆頭に数多く手がけていて、これらの作品は再度CMやTVのBGMに使われているので意外と既知の曲が多いでしょう。

"Chariots Of Fire"music from the original soundtrack by Vangelis/
                「炎のランナー」オリジナルサウンドトラック

1981年

 とりあえず、前置きとしてロックの範疇に入らない音楽であることを明記しておきます。

 この「炎のランナー」は第54回のアカデミー賞オリジナル作曲部門を受賞(映画自体も作品賞を筆頭に複数受賞)しています。映画自体は見ていないのでなんとも言えないんですが、1924年のパリオリンピックを舞台に二人の100m走走者の苦悩や喜びなんかを描いたスポーツ系感動映画だそうです。
 当時のオリンピックは"平和の祭典"古代オリンピックを範に近代オリンピックを作り上げたクーベルタン氏の理念が健在で、IOCと行政、リゾート資本が三つ巴で繰り広げる利権構造とナショナリズム色の強い現在のものとは違っていたようです。まあ、クーベルタン氏が範とした古代オリンピックも現在のオリンピック同様、時代が下るにつれて賞金目当ての選手やら国威を示すような色が出てきてショービジネス化、政治化していったらしいですがね(笑)
 そんな(良くも悪くも)青臭いアマチュアリズムが裏打ちされた(と考える)映画にあわせたかのようにヴァンゲリスの曲は雄々しく壮大なサウンドとなっていて、逞しい肉体と高潔な精神を表現しているとおもいます。

 一部を除いて、ヴァンゲリス一人で作曲、演奏、編集をこなしていて、ピアノなどの生楽器も使われているようですが基本はシンセサイザーによる演奏です。シンセサイザーに関してもムーグなどのアナログシンセや(これはシンセには入らないけど)メロトロンなどが使われた形跡はなく、デジタルシンセが使われているようです。生々しさの点では生楽器にはもちろん、アナログシンセやメロトロンにも劣るデジタルシンセではあるけれども、ヴァンゲリスの演奏に関しては無機質な感じは感じられず、温かみを持っています。

 ちなみに、全編にわたって繰り広げられているシンセサイザーによる壮大なサウンドは元ロックミュージシャンとは思えない天才的な重ね方で、オーケストラにも引けを取らないものとなっています。様々な音色が使い分けられているんですが、時代を考えるとシーケンサーなんかではなく、地道に多重録音していったんでしょう。
 その多重録音もマイク・オールドフィルドの「チューブラベルズ」に見られるような、あらゆる楽器を使いこなす才能も気の遠くなるようなレコーディング作業も不要にしたのはシンセサイザーの功績でしょうね。その点では20世紀電子技術万歳ですね(笑)
 ヴァンゲリスの作曲センスとシンセサイザーの進歩が結実したのが「炎のランナー」であるとも言って過言ではないですね。

 

 

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