Premiata Forneria Marconi、略称P.F.Mは名実ともにイタリンロックムーブメントを代表するバンドです。前身バンドであるクエッレはイタリアロック/ポップス界の大御所ルチオ・バッティスティのアルバムのバックミュージシャンとして採用された際、彼に才能を認められました。クエッレは当時バンド内の対立が起きていて、バッティスティは彼らの将来を案じてP.F.Mとフォルムラ・トレの2つのバンドに分割しました。
そうして、72年に1st、2ndの二枚を出したP.F.Mに注目したのが元キングクリムゾンのピート・シンフィールドで、エマーソン・レイク&パーマー(EL&P)のイタリア公演に同行していた彼がEL&P主催のマンティコアレーベルからアルバムを出すように働きかけたのです。そうして出されたアルバムが73年の世界デビュー作「Photos
of Ghosts/幻の映像」なのです。
P.F.Mは英国や米国でも熱心に活動し、日本にも70年代に来日公演をし、イタリアのロック音楽史上稀に見る世界的な認知度を手にしたバントとなりました。その音楽性はジェネシスやジェントルジャイアントの影響を受けたといわれているように、クラシック、フォークの叙情性や、軽快ながらも奥が深いジャズの要素を含んだ音楽を楽しませてくれています。また、彼らが世界デビューする際に最大の武器となったのがイタリアらしさで、単に英国のプログレバンドのフォロワーとしてではなく、民族音楽(イタリアの土着音楽)の色を付けることによって逆に世界マーケットに受けられたのです。
Per un amico/友よ
72年発表の2nd |
![]() 肝心の「幻の映像」との違いですが、一番大きいのは歌詞の違いを含むヴォーカルパートですね。本作ではヴォーカルパートの無い部分にも「幻の映像」では歌が入っていたりします。それに英語とイタリア語では違う言語だけあって響きが違います。イタリアのバンドですから、なんとなくイタリア語のほうがしっくりきます。 それにしても、Franco Mussidaのギター、Flavio Premoliのキーボード(ムーグ・メロトロン・ハモンドその他)、Mauro Paganiのヴァイオリン(エレキヴァイオリンも有り)といいメンツがそろっているバンドですよねぇ。Giorgio Piazzaのベース、Franz Di Cioccioのドラムも無論素晴らしいですよ。 2002/1/30 |
Photos of Ghosts/幻の映像
73年世界デビュー作 |
![]() 非常に明朗快活な作品でポップです。1曲目の「RIVER OF LIVE/人生は川のようなもの」などに見られるように叙情的で壮大な要素もあるんですが、負の精神性のようなものは微塵もなく、静かであったり、叙情的であったりしても明るいです。演奏も危なげなくて安心して聴いていられます。ただ、あまりに優等生的なのでロックの破壊的な衝動とかを期待する向きにはオススメできません。もちろん、イタリアンロックに手を伸ばそうという方はアグレッシブさより、整合性のある演奏やイタリア民族らしい音楽性のほうを重視するでしょうから、重大な欠点にはならないでしょう。 |
L'ISOLA DI NIENTE/甦る世界(イタリア語盤)
74年発表の3rd |
![]() ちなみに、イタリア語盤と英語盤の両方が存在し、曲順や収録曲も違います。私はまだ英語盤を持っていませんので他のサイトなどを見るとイタリア語盤のほうが好きという意見の方が多少勝っていました。 前述の通り内容はロック度もプログレ度(複雑度)も高くて幻の映像ほど聴きやすくはないです。ですが既にプログレ病に掛かっていると自己診断が出来ている方には絶対にオススメです。かく言う私も幻の映像よりこちらの方が好きです。 |
COOK/クック=ライブ・レコーディング
75年発表のライブ |
![]() P.F.Mの美点はジャズやクラッシックの要素を巧くまとめている点や明朗かつ叙情的な雰囲気、曲に負けない演奏テクニックなどです。反面、ロック的なアグレッシブさを持たず、優等生的であると「幻の映像」のレビューでも書きました。 |