Pain of Salvation

ENTROPIA/エントロピア

97年1st

 スウェーデン出身の五人組プログレハードバンドのデビュー作です。北欧出身ということでネオクラシカル系のプログレハードを期待される方もいるかもしれませんが、そういう方が期待するサウンドではないです。

 そのサウンドは非常に重量感のあるもので、ジャズやファンクの要素も加わることで得体の知れない存在感を示しています。クラッシックよりジャズ的なところはドリームシアター(以下DT)との共通点と言えます。ですが、比較的作品ごとのカラーが整理・統一されているDTに比べると、詰め込み過ぎな印象があります。まあ、意欲的と見るか散漫だと見るかは人によると思います。個人的には未熟さゆえの勢いとして受け取っていて嫌いではないです。
 また、大陸出身らしく湿り気が強く、随所で聴くことのできるギターの泣きや感情表現が巧みなボーカルは魅力的です。このマイナー調の泣きの要素は重要でテクだけでなくエモーションの面でもいけることを証明しています。ただし、くさいくらいに泣いてるところはまたしても人を選ぶ音楽性かもしれません。
 そうですね。これらが示しているのは、全てにおいて大げさという事かもしれません。ただ、大げさなサウンドというとプログレハードというジャンルそのものとも言えますので弱点にはなりにくいとも思います。

 演奏面で具体的に評価したいのはDaniel Gildenlowでリードボーカルとツインギターの片方を担当しています。作詞・作曲も彼の手によるもので間違いなくバンドのリーダーですね。作曲センスの特異さは既に述べたので置いときますが、ボーカリスト・ギタリストとしての力量や個性もたいしたものです。
 ボーカルに関しては少しざらついた声質もワイルドでかっこよいのですが、なにしろスタイルが多彩でシアトリカルなパフォーマンスが圧巻です。例を挙げますと、“情感溢れるミッドレンジボイスに囁き”と“盛り上がりで炸裂するハイトーンボイスとシャウト”に加えて“デス声など”ですね。純粋に声量や帯域で話をしてもまずまずの力を有していると思いますが、発想が素晴らしいと思います。素晴らしいツール(声)も使い手の能力(発想)次第ということですね。
 ギターに関してはツインリードギターで判断の難しいところですが、バラードを除けば基本的にディストーションが強く効いたサウンドですね。ソロでは比較的高音域を多用した速弾きをしていて、ここだけは北欧系なのかもしれません。また、ソロパート以外ではリフ重視でアンサンブルを崩すようなことはさほどないです。バラードナンバーではピアノ・シンセにメインを譲ったり、アルペジオで攻めたりと変幻自在です。

 次にお勧めの曲ですが、7曲目「REVIVAL」9曲目「ToTheEnd」12曲目「NightMist」ですね。これらはアルバムの中でもアップテンポ且つメロディアスな曲で素直にかっこよい曲と言えるはずです。特に7曲目「REVIVAL」のリフのかっこよさと後半の泣きまくるギターソロにはたまらんです。

2001/12/10

The Perfect Element Part 1

2000年3rd

 基本的に1stの延長線上にある作品です。ただ、何でもありな感じの1stより統一感が感じられるのが逆に寂しい気がします。また、アルバム全体が統一されたとはいえ、バラードやら壮大でシンフォニックな曲が幅を効かせているのも不満ですね。メロディアス且つアグレッシブな曲が1stでは光っていたので残念です。まあ、腕を上げたのは紛れもない事実ですがね。

 ちなみにタイトルから判るように、続きのパート2を作るらしいです。その際にはもう少しアグレッシブなのが欲しいですね。

 蛇足ですが、DTのメトロ2のほぼ一年後にだされた本作を聴いて、続き物を作るという点でのDTからの影響を感じた一方で世代交替も感じました。まあ、年齢はDTのメンバーより5〜10ぐらいしか離れていないとは思います。ですが、メトロ2で感じたテクと理論しか感じられない作品作りをDTが今後も推し進める様でしたら以外と早くDTの旬は終わるのではないかと思います。その時にPAIN OF SALVATIONがシーンの頂点にいるかどうかは判らない(多分無理)にせよ、本作とDTのメトロ2の出来や方向性を比較するとDTはあぶないと思います。まあ、実際に旬が過ぎてもDTの地位が変わらない可能性も高いですけどね。現実に、使命を終えたベテランバンドがシーンに居座り続けることもざらですから(笑)

2001/12/10

Ramedy Lane

2002年発表の4th

 Pain Of Salvationの4thは非常に良く出来た作品だと思います。最近では1stに見られたジャズやファンクの要素まで取り入れる雑食性は見られなくなったものの、やや暴走気味とさえ感じられたのも事実なので、サウンドに整合感が出てきたと3rdなどでは評価しました。ただし、ロックでは暴走気味なサウンドあったほうがカッコよいと思われるのも事実で、インパクト不足となることも有ります。その上で4thを聴くと、3rdの路線を継承しつつも曲作りやボーカルパートの充実具合において格段の進歩を遂げており、1stの雑食性によるものとは違う意味で衝撃を受けました。ラウドなサウンドやら多様な音楽要素をミックスすること、デビューアルバムやサウンドの方向性の変化によって聴き手にインパクトを与えるのは、正直、楽だと思います。それに対して一度自らが提示した方向性を踏襲しつつ、曲作りや演奏面での進化を果たして聴き手にインパクトを与えるのは容易なことではないと思います。

 詳しく内容の解説をします。これまでの作品同様に本作もコンセプトアルバムです。テーマは「愛とセックス、危うい人間関係」だそうで舞台はハンガリーだとのことです。やはり過去の作品同様に暗い感じですが、同時に情念的で繊細さにあふれた叙情的な作風であるのも過去と同様です。ハンガリーが舞台ということで東欧系(文化的に中近東系に近い)のリズムや旋律を導入しているのは新しい試みでスパイスとしてよく機能していると思います。

 演奏面ではリードG兼リードVoのダニエル・ギルデンロウのボーカリストとしての成長を感じました。バッキングコーラスを勤める他メンバーの活躍もありますが、ボーカルパートの充実振りが素晴らしいです。元々、様々な声色を駆使したシアトリカルかつドラマティックなボーカルを披露していたダニエルですが、更に声色の使い分けが巧みになり、ヴォーカリゼーションや他メンバーのバッキングコーラスの重ね方など非常に実験的で興味深いです。

2002/2/15

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送